タンナの物語風ライフログ

タンナの人生を物語風に伝えるブログ。

教会であったヒトコワ話~真冬に男女二人裸足で歩く~

当時21歳だった私が、真冬に裸足で5キロ歩くことになったのは、教会で暇をつぶしたことが原因だった……

(特定回避のため話の所々を変えています)

 

⚠閲覧注意⚠

この記事には、性的な描写に死に関する記述に人が怖い描写があります!

そういうものを求めていない人はこの記事を読むのをやめてください!

気分が悪くなってもタンナは責任を取れません!!

 

私とkとj

このお話は今から数年前の話だ。

 

当時私は地元から離れ、大学近くのボロアパートに住んでいた。

学生生活は順調。

教授とも仲良くなったり、勉強やサークル活動に勤しむ日々。

 

日々新しい知識を手に入れる喜びを覚え始めた最中、友人の不幸に見舞われた。

突然の交通事故で友人が即死。

 

大切な友人を亡くした私は変わった。

楽しい生活は一変し、解決のできない悩みに苦しむ生活が続くことに。

 

 

3か月で体重も一気に15kg減り、周囲の学生とも会話ができない状態に。

見かねた教授が教会を紹介してくれた。

だけど、正直迷惑だった。

 

生まれも育ちも仏教で育っていた私はその提案にどうにも乗り気ではなかった。

だけど、朝起きて夜まで誰ともしゃべらない生活がいやになっているのも事実。

 

教授の紹介を無下にするのも良くないという義務感もあったので、ある日曜日に礼拝へと参加した。

 

訪れた教会は殆どが私より年上で多種多様な人がいた。

人生経験の豊富な彼ら彼女らは、私の良い相談相手になってくれた。

全く見ず知らずの私に優しくしてくれる人たちに癒され、それに感動した。

 

たった一回の参加で教会が気に入った私は、毎週のように礼拝に参加をすることに。

とはいっても、礼拝の内容はほとんど覚えておらずその場にいる人たちとの会話が目的だった。

 

 

そんな邪な私を牧師(以下先生と表記)は快く出迎えてくれた。

先生は他県育ちで、大学のあった県では珍しいほど明るい。

非常におおらかで大きな声で笑い、その時小太りな体が揺れるのが印象的。

 

そんな先生のいる教会だから、ここの雰囲気はとっても暖かいのだなと一人で納得していた。

 

 

しばらく通っていると、私と同い年ぐらいの女性が通い始めた。

針金のように細くて、どこか鋭い目つき、なにより奇抜なゴスロリファッション(特定回避のため体型と目つきと服装を変更しております)が目立っていた。

 

彼女の名前は「k」。

kは先生の娘、同い年かと思ったらすでに大学を卒業していた。

 

礼拝の後、先生からkさんを紹介をされた。

話を聞くと、在学中は一人暮らしをしていて卒業後はそのまま働かずにアルバイトをしながら夢を追う芸術家をしているらしい。

基本的に休日がない状態だかアルバイト先の倒産により休暇が取れたらしく実家である教会に帰ってきて礼拝に参加し始めたらしい。

 

彼女の経歴からそれは見て取れたけど、なかなか独特な人だった。

周りからは「当代きってのお転婆娘」とも評されていた。

お転婆かどうかは分からないが、確かに普通ではない。

先生に紹介された後で他愛もない話をしていたら、いきなり「君のそのファッションありえない!!!」と初対面の男に言い放った。

 

唐突なファッションチェックに驚いたが、あけすけにものをいう友人を亡くしたばかりだったので思わず笑った。

彼女もつられて笑っていた。

 

 

こんな風に私とkは酷い初対面ながらも仲良くできた。

勿論、お互い主義趣向は異なっていたがお互い尊重して会話するという姿勢が一致していた。

 

 

出会いから数か月たって更に仲良くなった私たちは近隣の教会を誘ってイベントを企画したりするなど密に関わり始めた。

 

とはいっても、二人きりで話すことはない。

話すときは必ず誰かがいるところ。

 

私は元気になっていたとはいえ、いまだに友人を亡くした経験から立ち直ることができず、私生活に関わるほど近い関係を結ぶことに恐れがあった。

だからkが私のボロアパートに遊びに行きたいとお願いされても断った。

kは少し悲しそうな顔をしたが、それ以上に自分の感情の方が大事なのだ。

 

このように若干の問題はあるものの平穏に時が過ぎていった。

 

 

礼拝が終わり家に帰ろうとしたところ、kが相談がしたいと話しかけてきた。

内容は私たちがひそかに怖がっていた「あの人」について。

 

 

 

あの人(以下jさん)とは毎週日曜日に礼拝を受けているおじさんだ。

 

彼もなかなか独特な人だ。

私より少し前に教会にやってきていて、クリスチャンではないようだが熱心に一番前の席で礼拝を聞いている。

前述した通り、教会には子連れの人や普通に働いている社会人やお医者さんまで多種多様な人がいた。

 

jさんは礼拝が終わると自らの興味の赴くままに話しかけていた。

 

 

一見すれば社交的な素晴らしい人のように思うが、一つだけ致命的な欠点があった。

それは「距離感がバグっている」ということ。

 

私も話しかけられて知ったことだ。

ほぼ初対面のjさんが私に話しかけた一言目は「君って車持ってる?」。

あけすけな人間が嫌いじゃない私は「お金ないんで車持ってないんですよ~」と返答。

 

するとjさんは「そうなんだ!僕はね○○の○○っていう車種の何年生産の~」

突然堰を切ったように彼は自分が所持している車の講義を始めた。

さすがに面食らった私は無言でうなずく赤べこ状態。

 

それでも彼の講義は続く。

15分ほど自分の車の話をしたjさんは満足した様子だ。

その後いきなり会話をぶった切って挨拶もなしに帰ってしまった。

 

あっけに取られた私はしばらく呆然としていた。

何か私が悪いことをしたのかもしれないと思い、教会のみんなにjさんについての話を聞くとみんなも同じような体験をしている様子。

 

ある奥さんは「子供っていつ作りました?」

ある社会人は「年収と貯金っていくらあります?」

と聞かれていた。

 

 

jさんは根っからの悪人ではないと思うが、人と人との距離感が普通ではなかった。

そういう行動をしていたからか、嫌われてはないものの若干避けられている。

唯一楽し気に話しかけるのは先生だけ。

 

教会信徒の暗黙知として「若干不思議な人」という評価が下されるのもよくわかる。

 

 

kさんから、そんなjさんに関する相談を持ち掛けられた段階で嫌な予感がしていた。

正直その問題に関わりたくないと思ったし、二人で話すのも嫌だったが、kさんは本当に悩んでいるようで目にはクマができていた。

出会ったころに比べて若干痩せているような気もする。

 

仕方がないので、相談に乗ることにした。

皆が帰って誰もいない礼拝堂で私と彼女は待ち合わせた。

 

そしてほぼ同時に待ち合わせ場所に到着。

彼女は周りを見渡して警戒しつつ話し始めた。

「あいつが体を触ってくるんだけど……」。

 

私は思わず絶句し手で口を隠した。

jさんは悪い人ではないと思っていたが、一線を越えていたようだ。

 

私は「そういうことなら先生に伝えよう!私もいっしょに行くから!」と提案した。

kは浮かない表情をしながら「体を触ったっていうよりも、肩についてたごみを無言で取ってくるだけなんだ…」と呟いた。

 

なるほど。

確かに難しいラインだ。

 

jさんは距離感がバグっている、だから親切なことをするにしても唐突にやるだろうと想像できる。

「もしこれが本当に親切だった場合、あまりにもjさんが可哀想」とkは言う。

それでどうしたらいいか私に相談を持ち掛けたようだ。

 

確かに解決策のない問題ではある。

しかし!私は当時社会福祉学部に在籍していたのでこの手の問題は講義で取り扱ってきた。

 

だから解決策、というより対抗策を思いつくことができた。

 

それは、私とスポーツインストラクターの夫婦でチームを作ること!

kがチームの近くに座り、礼拝の前後をチームで行動することで話しかけにくくさせるという作戦。

 

早速次の礼拝でその作戦は決行された。

私の作戦は成果を上げたようで、kはjに全く話しかけられなくなった。

kさんは安心した様でしばらくの間楽しそうに過ごしていた。

 

全ては上手く行った、ように思えたがそうでもなかった。

私は教会に全幅の信頼を寄せていたが、その信頼にひびが入っていた。

 

正直私はjさんに対してある疑念を持っていた。

無言で肩についたゴミを取る行為に何の感情も持っていないと言えるのか?

親切の中に邪な気持ちがないと言えるのか?

 

私はjに少し恐怖を覚えていたこともあって、その作戦が決行されてから礼拝前と後に彼のことを目で追っていた。

そして気が付いた、ここ最近他の信徒に話しかけていないということに。

 

代わりに話していたのは先生だった。

 

 

 

へんてこりんな儀式

多少の疑念を抱いていたものの平穏な日々。

そんなある日、牧師さんが私とkを呼びだした。

 

 

先生に呼び出されるなんてこれまでなかったことなので、今の状態と関連付けざる負えない。

恐る恐る先生の元へ行くと、普段先生が勉強に使っている小さな部屋に案内された。

そこは本棚と机しかない簡素な部屋で、なにより窓がない。

 

若干の窮屈さを感じつつも先生が話すのを待っていた。

 

そして先生は私とkを横に並べて話し始めた。

「実はある要望があってね……」

「要望って何?」とkさんがぶっきらぼうに言い放つ。

 

すると先生は「jさんがkとタンナ(私)に祈ってほしいという要望があった」と言った。

 

正直膝から崩れ落ちそうだった。

教会に行かない人には分からないと思うけれど、基本的に祈ってほしいという要望を断ることはできない。

もちろん、あからさまな加害をしている人であればさすがに断れるが、jさんの場合その判断が難しかった。

 

結局何か被害があったわけでもなく、親切にも受け取られかねない。

 

 

kさんは自分が覚えている恐怖を伝えた。

すると先生は別の案を提案することでその呼び出しは終わった。

 

ある日、いつものように勉強をしているとスマホから通知が来た。

友人が亡くなって以来、教会以外で塞ぎ込んでいた私にとっては一大事。

いったい誰なんだと思いスマホを確認すると先生からのメッセージだった。

 

 

どうやら新しく安全安心な案ができたらしい。

提示された別の案は「牧師を含めて祈る」というもの。

私は安心した。

 

 

 

実際問題、jさんとトラブルになることは避けたかった。

それはkさんも同じで牧師という教会内の権力者の前でよもや変なことはしないだろう。

この時確かに安心した私がいた。

 

 

ついに、その日がやってきた。

礼拝の後で私とkさんは牧師用の小さい部屋へと向かった。

 

ドアを開けるとjさんが居る。

私たちを見ると笑っていた。

正直不気味。

 

すぐに先生もいらっしゃり、jさんのために3人で祈る会が始まった。

とはいっても、私たちが話すことはなくjさんが日々の生活での困りごとを話すだけのもの。

 

彼が話し終わり私たちが3人で祈る。

jさんとの祈りの儀は長くても10分、短ければ5分だった。

 

祈りの儀だけならね。

それは初回からそうだった、私とkが儀式を終えすぐに帰ろうとするとjさんがマシンガントークを繰り出した。

かなりプライベートな事柄なので詳細は省くが、基本的に恋愛関係の話が主な内容だった。

 

先生はさすが牧師と言った対応で「彼らも用事がありますからこの辺で……」といって終わらせる。

 

それからしばらくこの儀式が続いた。

大体一か月ぐらい。

 

礼拝の後、3人で集まって祈ってjさんの話を聞く。

 

 

 

そしてある礼拝の時、ついに問題が起きた。

なんと、牧師が礼拝の後すぐ出かけないといけない用事ができた!

 

さすがに儀式は中止だろうと思ったが、牧師から言われたのは一回だけ二人だけで祈ってやってほしいということだった。

 

断ることもできたが、kと私はその時ばかりは断れない事情があった。

何故なら、kと私はこの後教会で別のイベントをする予定だったのだ。

準備もすべて終わってるし、あとは開催を待つだけ。

つまり逃げる口実がない。

 

 

仕方がないので、勇気を振り絞って部屋へと向かう。

kは足取りが重そうで私の後についてきた。

 

いつもより心なしか重く感じるドアを開けると、いつものようにjさんは部屋にいた。

いつもと何も変わらない状態だが、違和感を感じた。

 

 

jさんの息が荒い。

 

さすがに心配になった私は「大丈夫ですか?」と聞いた。

jさんは震えた声で「大丈夫です、感極まってて…」と振り絞るように言った。

 

kは「何があったんですか」と聞いた。

彼女なりにもjさんのことを心配してたんだと思う。

 

するとjさんは「お二人が私を信頼して二人で祈ってくれるなんて…」と感激した様子で叫んだ。

 

kと私は困惑。

自分からしたわけではないことに、多少の罪悪感を覚えつつも祈りの儀を開始した。

 

 

感激していたことが原因なのか、祈りが長すぎる。

普段は長くても5~10分

今回は15分経過しても終わる様子がない。

 

真剣に悩んでいるなら私もこんなことは思わないが、なにせ祈ってほしい内容が2周3周と同じ内容を繰り返している。

 

私たちが聞き飽き始めていた20分ごろ、話し終わったようで私たち二人で祈った。

話が長かったので手短に要約して祈った。

 

jさんはそれに怒ることなく祈りを最後まで聞いてくれたのに感謝していた。

その様子を見て、やはり根は悪い人ではないんだなと思った。

 

 

 

すると、私とkさんの手を握ってそれに頭をこすりつけて感謝し始めた。

まぁ、いくら信徒とは言え正直怖い。

ただ悪い人ではないという確信があったので少しだけそれに付き合った。

 

それも5分ぐらいしそうな勢いだったので、私は勇気をもって「そろそろ私とkは用事があるのでこれで失礼します」と言って3人とも部屋から出た。

 

私とkはjさんを礼拝堂の出入り口付近まで見送った後、二人同時になで肩になった。

多少安心したとは言え、やっぱり疲れる。

 

 

待ち人を待つ私たちが陥った状況

イベント開始まで数時間、私たちは少し休むことができた。

 

誰もいない教会は実に神秘的で、普段は見ない教会の装飾品なんかを眺めていた。

ステンドグラスの意匠に思いを馳せていると、その向こうで何かが動いていた。

玄関へと向かうと、外は大雪・強風だった。

 

牧師用の小さな部屋にいたから気が付かなかった!

 

 

 

するとkは「電車大丈夫かな?」と呟いた。

確かにイベントの参加者は電車で来る予定。

嫌な予感はしたものの、参加者から何の連絡もないので楽観視していた。

 

午後3時のことだった。

 

 

 

一時間後、その予感は的中。

電車はすべて運休となってイベントは延期を余儀なくされた。

kにそれを伝えると気落ちした様で明らかに元気がなかった。

 

だが、落ち込んでいる暇はない。

何せ、我々にはやることがある。

セッティングした小道具に用意したおやつの後片づけをしなくてはいけない。

 

いくらこの教会が開放的とはいえ(kにとっては実家)何時間も礼拝堂を使いっぱなしっていうのは申し訳がない。

 

気力を振り絞って我々は片づけを開始した。

ただ二人別々で効率的にやるのも味気ない。

 

急に私はkとちゃんと自分のことを話したことがないことに気が付いた。

それまで私は塞ぎ込みがちで苦しい日々を送っていたのに、いつの間にかイベントの企画までするようになっていた。

 

kが私を引っ張ってくれたおかげだ。

それなのにお互いのことをちゃんと知らないのは寂しい。

 

そう思ってkに話しかけ、現状の悩みや将来の夢について語り合った。

二人きりで楽しい話をするのはこれが初めてのことだった。

浮かれる気持ちに会話は楽しい、だが遅々として片づけは進まない。

 

ちゃんとやれば一時間はかからない作業なのに結局2時間かかった。

片づけが終わっても名残惜しいので、しばらく教会でちんたらすることに。

 

 

なんとなく素敵な雰囲気が流れ始め、会話も流れるようになった。

その流れをぶった切ってインターホンが鳴った。

牧師がいないので対応できないと思った私たちは礼拝堂に電気がついていないこともあって居留守を使った。

すると、ドアが開く音がした。

 

しまった!

私たちがいるからカギがかけられていないんだった!

 

 

だが、今さら出るのはイヤなので、申し訳ないなと思いつつ居留守を継続した。

すると靴を脱ぐ音が聞こえた。

 

やばい!入ってくる!

見つかったら気まずいと思いkと私は礼拝堂の奥にある音響室(名称不明)に入った。

ここは中からカギがかけられるので隠れるにうってつけだった。

しかも遮光カーテンまでついてる。

ありがたい、神様はいろんなところで備えてくださると実感した。

 

それにしてもだれだ?

いくら教会とは言え呼びかけぐらいするだろう。

 

 

なんと、やってきたのはjさんだった。

何か用事でもあるのかと思ったが、それにしても挨拶もせずに入ってくるのは人としてどうかと思う。

jさんは周りを見渡しながら歩き始めた。

 

「先生~いらっしゃらないんですか~?」と教会に入ってから呼びかけている。

誰もいないとわかったのか、あたりをふらふら歩き始めた。

そして、信徒それぞれの指定席に置いてある聖書を読み始めた。

 

一冊だけ読むならいい、勉強しに来たのかと思えるから。

また誰のものかもわからないだろうし。

 

しかしjは次々と聖書を取り換えて読んでいた。

余りの異様さに胃袋が縮む感覚を覚えた。

 

 

私とkは遮光カーテンの向こうからその様子を見ていた。

薄気味悪さと理解不能が二人の呼吸音すら消してしまったかのように静か。

 

 

すると、kのゴテゴテに装飾された聖書が読まれ始めた。

いままでは立って聖書を読んでいたが、その聖書だけは椅子に座って読んでいた。

 

kはその様子を見ていて小さく声を漏らし、小刻みに震えていた。

男らしく事態を打開したいところだけど。私も泣きたくなるほど怖かった。

 

ひとしきりkの聖書を読んだ後、私のボロボロの聖書を座って読み始めた。

耐え難い沈黙とお互い知らないうちに手を握りあっていた。

 

すると私たち二人の聖書にjはキスをするような姿勢で顔を近づけた。

そして頬すりをしていた。

 

kは握った手をギュッと強く握った。

私も強く握り返した。

 

 

 

パニックと冷静さとちょっと光るもの

jはその後礼拝堂から出て行って乗ってきた車で帰っていった。

 

私たちは車が発信した音を聞いてからしばらくしてようやく音響室から出た。

二人とも無言で手を握り合っていた。

 

あまりにも精神的ショックが大きすぎて何も話せない。

 

 

確かにjに対しては私たちは薄気味悪いと思っていたが、それは私たちとコミュニケーションが取れないからだと思っていた。

だが、礼節と礼儀をお互いに理解し合えればいつかきっと理解できると思っていた。

 

しかし、そうではなかった。

jは私たちの聖書にしたように、愛情以外の感情を持っていた。

それが何かは分からないけど、とっても怖い。

 

 

無言のままのkと私。

なんだかそのままいるのも嫌だったので、小さな庭へ雪景色を見に行った。

窓を開けると強風は収まっていたもののドカ雪が降り注いでいた。

 

時間的には夕方5時、まだ普段なら明るいがすでに夜のように暗かった。

 

 

少しさっきまでの恐怖を忘れかけていたころ、jが再び来た「だれかいるのー?」と大きな声で呼びかけていた。

 

私はパニックになって庭に出た。

このまま逃げてしまえばもう怖くないと思ったから。

 

だけどkを置いていけないと急に冷静になり、視線隠し用の小さな木を乗り越えkに「いっしょにアパートに逃げよう」と小さい声で誘った。

 

 

 

私と彼女は逃げた、アパートまで一キロあるので結構な距離を歩く。

その間一切の寒さを感じなかった。

人間いざとなると雪の上でも冷たさを感じないんだなと新たなる発見を誇らしく思っていた。

 

二人で私の家に到着した。

ほっとしたのか二人とも靴を持ってきてないことを笑い始めた。

 

しばらくして、彼女は私の靴を履いて教会へ帰った。

 

 

 

その後、kと私は教会に行くことはなかった。

kは元居た住居に帰り、私は単純に行きたくなくなった。

 

勿論あんなことがあったから行きたくないし、なによりこんなことを言えるわけがない。

証拠もなければ、jを気味悪がってたkと私の証言しかない。

いろいろあるけど、これ以上この教会に関わりたくなかったというのが正直なところ。

 

相談できない孤独を初めて味わったのはこれが初めてだった。

若者が教会を去るには十分な理由だと思う。

 

 

 

全くいい思い出ではないが、悪いことばかりじゃない。

 

この出来事のおかげで塞ぎ込みがちだった私は変われた。

人と関わると悲しく恐ろしい出来事に会うけれど、それ以外の楽しい思いがあることを知った。

何も言わなくても、何かを感じて悩んでいる人がいる事を知った。

直感をだれにも伝えれない人の気持ちもわかるようになった。

これは以前の私なら考えもしなかったようなことだ。

 

 

kはその後少し塞ぎ込んでいたようだが、同じ趣味の素敵な人と付き合いを始めた。

それからはぐんぐんと元のお転婆に戻っていった。

 

 

そんなkも今年ついに結婚するようでお手紙が届いた。

いろいろと思い出話が書いてあって、文末に「実は、男の人の部屋に入ったのはあなたが初めてでした」と一言添えてあった。

 

 

どうやら、心の傷はお互いに癒えることはなさそうだが、二人で逃げた思い出は悪いものではなさそうだ。

 

 

 

このお話に出てきた教会は別の教会に統合され今はない、信徒もみなバラバラに散った。

そしてjはこの出来事の数年後、病によって亡くなったそうだ。

 

 

小話

この話を書くのに大体5時間、文字数にして8,400文字。悪いペースじゃないけどもう少し早めに書き終えたいと思いました。

 

ここまで読んでくださりありがとうございます👐

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