学校を休みがちだった私が嫌われているクラスメイトに、消しゴムを貸した結果……
三十代も見えてくると自然と友達は減っていく。
結婚、仕事、病気……
理由は様々だけど、若い時みたいにみたいにずっと遊んでいる人は少なくなっていく。
だけど、不思議な縁で友達を続けている人もいる。
今回はそんな友人の話。
(特定回避のため、見た目と時期を変えています、それにより過去の記事と矛盾が起きていますが変更の為なのでご理解ください)
- 消しゴムでつながる線
- 一人ぼっち同士で
- 幼いとはいえ、メンツはある。
- 大人な彼女の子供な部分
- 帰り道
- 変化を起こす!
- 卒業と卒業してから
- 消しゴムケースの中
ボランティアサークルで浮いてる子に副部長の私がたくさん話しかけた結果……
人に優しくすることが良いことなんて小学生でも知ってる。
でも優しくして「何に」とって良いことなのかを知るのは大人になってから。
私も、そうだった。
サークルの友達に優しくしただけで、それまでの生活がすべて台無しになったんだから!
(特定回避のため年代や年齢や場所を変えています)
私は副部長で調整弁!
当時、私は大学三年生。
サークルの先輩から頼まれて副部長の役職を請け負っていた。
とはいっても、大したことはしない。
ボランティアサークルだったので、連携していた外部との連絡や人手が足りない活動で仕切ったり周りの人間のメンタルなんかをケアしていた。
こうして聞くと良い人のように聞こえるが、全然そんなことはない。
サークルの副部長になったのも成り行き、サークルに入ったのも友達に誘われたから。
とにかく主体性がなく、しかもサークルに自分から入る人の気持ちもわからなかった。
ただ、役職を請け負った以上一生懸命にやる。
それまでほとんどSNSをやったことがなかったが、サークルの活動を広く知ってもらう為にいろんなSNSのアカウントを作って運営したり。
サークル内の活気がないとわかったら、元気な学生をそこらへんでスカウトしてサークルの活性化を図ったり。
学業そっちのけ、無我夢中でやっていた。
そのおかげか、教授から褒められたり他のサークルから協力してもらえるようになったりと、サークル自体は少しずつ改良改善。
まさに順風満帆。
ただ、サークルには一つ大きな問題があった。
それは「グループ同士の険悪な雰囲気」だ。
基本的にボランティアサークルに入ろうって人間は気がやさしい。
見た目はいくら派手でも、その中身は非常に温和。
その反面非常に仲間意識が強く、派閥が生まれがちだった。
私のサークルでは二つのグループができていた。
ここでは仮に「Aグループ」と「Bグループ」としよう。
Aグループは派手な女子と男子が集うグループで気は優しいがボランティアを出会いの場所ととらえている節があった。
Bグループは文学系の女子と男子が集うグループ、おとなしくて外部からも人気のグループだけど理解できない人を見下す癖があった。
この二つのグループはボランティアの現場では協力するが、お互いに陰口を叩いたり口を利かないなど常に冷戦状態。
だから二つのグループが集まる会議などはピリピリしている。
私はこのグループの調整役として日々グループ間を移動していた。
そんな日々だから二つのグループに仲良くしてほしいなんて思わない、せめてサークルの活動だけでも仲良くしてほしいってのが本音だ。
そんな状態だから調整役をやりたがる人間は一人もいない。
内心、この二つの派閥に翻弄されてサークル生活を終えるんだろうと思っていた。
そんなピりついてても平穏な生活がある日突然終わりを迎える。
彼女は純粋天然天真爛漫ガール!!!
その日はサークル活動は会議中心。
学内でも重要視されるほど大きなボランティアプロジェクトについての会議だった。
一つの大きな講義室を借り、全体の方向性や役割について分担するのがその日の議題。
正直、胃が痛い。
というのも、二つのグループの関係が非常に悪くなっていた。
発端はAグループとBグループの口論。
内容は他愛もないものだが、本人たちにとってはメンツをつぶされかねない事態。
今まで以上に雰囲気が険悪なのは明白だった。
そんな中でこの会議をできるかという不安が頭をよぎった。
若干テンパりながら、会議のための資料を見ていると、資料の中にこの会議から参加する新人サークル部員が一人いる事が判明した。
彼女の名前は「t」。
私はその名前を見たときに青ざめた。
なぜなら、ほとんど関わり合いのない新入生でありながら入学初日からいろんな伝説を作っていたからだ。
大学の偉い先生に自分で作ってきたお弁当をいきなりおすそ分けしたり、初の講義で教授に疑問をぶつけ続けて講義を中断させたり、と不思議ちゃんで有名な子だった。
ただ嫌なうわさはほとんどなく、すべて彼女の言動を面白おかしく伝えたものばかり。それ以外は優しい子だと聞いている。
そんな子がボランティアサークルに興味を持つのは当然と言えば当然なんだけど、不安材料がある。
それはどちらのグループに属すか、ということ。
tがどういう性格なのかはいまだ不明、だからどちらのグループに属してもおかしくない。
普段ならこんなことを気にすることはないが、今は状況が悪い。
場合によっては、サークル部員の大量離脱となりかねないからだ。
これから始まるボランティアは二つのグループの協力なしにはできない。
どうにかできないだろうか……。
まだ起こってもない最悪の未来に怯えながらその日の会議はスタートした。
幸いにも、会議自体はいたってスムーズに行われた。
意見交換も活発に行われて、本当にいがみ合ってる二つのグループがあるなんて信じられないほど。
そして大きなボランティアの方向性と役割分担が終わった、あまりにも順調に進んだのでいささか拍子抜けだった。
なので、会議の最後にtさんの紹介をすることになった。
私は「tさん!もしよかったら前に出て自己紹介してもらえませんか?」とマイクで呼びかけた。
するとtさんはそれに負けないぐらいの声量で「わかりました!!」と返事。
あまりの音量に周りの人はびっくりしていた。
tさんは大人数の視線をものともせず、颯爽と壇上に上がってマイクを掴んだ。
「みなさん!初めまして!tです!好きなものはカレーライスで嫌いなものは人間関係のゴタゴタです!どうぞよろしく!!!」
会場はそれまでざわついていたはずなのに、シーンと静まり返った。
私が副部長のプライドで何とか拍手をし、周りもそれにつられて拍手をした。
これが私とtの出会い。
tの第一印象は噂にたがわない物だった。
呉越同舟!!
会議後、私は実習に参加していて会議を欠席した部長に相談していた。
「tさん、面白いけどやっていけるかな?」
「その感じだとひと悶着あってもおかしくないね」
「とりあえず、何かあったら助けてあげてね!」と部長は私に役目を与えてその場を去った。
正直、副部長の役割だけでも大変なのにその上たった一人の人間のために神経を削らないといけないのかと思うと憂鬱だった。
しばらくたって、サークル会議の日がやってきた。
その日は翌日にあるボランティアに参加するメンバーを集めて打ち合わせをする予定。
とは言え、そこまで議論するような内容ではなく、単なる連絡事項の周知に近い。
参加人数も少ないので、そこまでピりつくこともないだろうと足取り軽く会議へと向かった。
小さい教室を会場にしていたため、机やホワイトボードを整理する必要があった。
準備のために教室に入ると既にtさんが居た。
教室のど真ん中の席に一人座って本を読んでいる。
西日に照らされながらひとり本を読むtさんは妖艶な雰囲気を纏っていた。
とても天真爛漫な言動を繰り返す人とは思えないほど。
入室した私に気が付いたのか、読んでいた本をパタンと閉じてこちらに手を振った。
「タンナさん!おつかれさまです!待ってましたよ!」
「tさんお疲れ様~まだ会議までは時間があるよ」
「じゃあお話しましょう!まだタンナさんとお話していませんよっ!」
「言葉は身の丈」というが、本当だったんだな。
たったこれだけの会話で彼女の性格がよくわかったような気がする。
その後はひざを突き合わせていろいろ話した。
彼女がボランティアサークルに参加した理由は近くのお祭りでこの大学のボランティアの人が素晴らしい活躍をしていたから。
ただ、それにあこがれてこの大学に入ったけど、いろいろと勉強が忙しくてこのサークルに入るのに時間がかかった、一年間積もらせた思いを爆発させるために今日から頑張ると大変に意気込んでいた。
話している間も体を上下に揺らしてて、あふれ出るエネルギーを抑えているようだった。
頼もしい言葉だったし、日常的に二つのグループに神経を使っている私には耳が痛い話だった。
ボランティアを成功させるために、二つのグループの調整役をしているが、私自身が現場に立って外部の人と触れ合うってことが減っていた。
注意しなければ。
ただ、一つ気がかりなのが、自分の中で理想化したそれは自分が働くに時に足かせにならないか。
その危惧はすぐに現実のものとなった。
AチームとBチームのメンバーがそぞろに集まってきて、いよいよ打ち合わせ。
連絡事項を伝え、現地への集合時間と食料準備の徹底をみんなに指示した。
打ち合わせは滞りなく進み、時間が余ってしまった。
私はついでにだれが写真の被写体になるかという話をした。
というのも、広報用のSNSをやっていたので投稿用の写真が欲しかった。
勿論目的は活動の周知とサークルのアピール。
だが思ったよりフォロワーが多くなってしまった。
当然注目度は個人のアカウントよりも高い。
私はさらにSNSを発展させようと、共感性をテーマに運営していくことを決めた。
方法としては、ボランティアに参加した中から一人決めて活動中の様子を撮影することでより身近に感じてもう、というのが当初の予定だった。
実際はいつ頃かは分からないが、SNSの写写真にどれだけ乗るかがサークル内の活躍度を示すバロメーターになっていた。
当然そこはグループの争いが生まれる格好の場所。
毎回写真の被写体をだれにするかは揉めていた。
だから妥協点を見つけるのが大変。
だから時間が余り次第の話題について議論することがこのサークルの伝統となっていた。
そして今回もそうなる予定だった。
私が議題を始めるとお互い喧々諤々の状態。
余った時間がどんどんと消えていく中、それを黙って聞いていたt。
私は先ほどの熱い思いが消えたんじゃないかと心配していたら、突然テーブルを蹴り飛ばす音が響いた。
そこにいた全員が驚き、音の発生源を見るとtだった。
tは「子供じゃないんだから喧嘩しないでよ!あなた達だれのためにやってるの?!」と怒鳴った。
それは子供のような甘い声ではなく、大人の女性の声だった。
突然の出来事はtの存在をサークルに知らしめたと同時に、二つのグループのメンバーが一気にtを標的にした瞬間だった。
孤立無援な人を応援するタンナ
会議での一喝以降、サークル内のパワーバランスは崩壊。
今まではAグループとBグループで拮抗していたが、tさんという外部からの力が参入したのだ。
結果として、tさんはサークル内で孤立。
目に見えるイジメや無視は起きなかったが、tさんに話しかけたりする人は皆無だった。
さすがに副部長としてこの状況は良くないと思い、なんとか解決策を早急に考えないといけない。
だが、いくら考えても解決策が思いつくことはなった。
その間もtさんは会議やボランティアで積極的な発言とボランティア企画をしていた。
正直、期待していたサークルでこんな目にあったらすぐやめると思っていたから、意外だった。
とは言え、協力する人が少ないのは良くない。
妥協案として私が実行したのが、副部長として協力するということ。
一応、私は偉い立場にいる。
いくらグループ同士のいがみ合いが激しくても、私にわざわざ敵対する理由はない。
少しずつではあるものの、AグループやBグループからtさん考案のボランティアに参加してくれるようになった。
そのおかげで、新しい場所や地域でボランティアが出来るようになった。
普段はグループどうしていがみ合っていた人たちもここだけはそれから解放されて、いい表情をしている。
その日もボランティアが終わり、後片づけをする時間になった。
tさん以外のメンバーはどうしても参加しなきゃいけないことがあると言って先に帰った。
久しぶりにtさんと二人きり。
「タンナさん参加してくださってありがとうございます!おかげでいろんな人が参加してくださいました!」
「いやいや、tさんの企画力があってのことだから……」
「そうですかね!うれしい!」
彼女のストレートな感情表現は、名ばかりの副部長である私を癒した。
もちろん、ボランティアなので感謝されることは人並み以上に多い。
だが、内情のことを考えると手放しで喜んでもいられなかった。
いつのまにか、ボランティアという目的以上にグループ間の調整に力を注いていたのかもしれない。
tさんに癒してもらっただけでなく、私にも気づきを与えてくれた。
その日の片づけはいつも以上に時間がかかったがそれでも楽しい。
久しぶりに純粋なボランティアができた気分だった。
その後もtさんの活動量はすさまじいものがあった。
次々と企画を立ち上げ、成立させていった。
当然、その活動記録にはtさんが乗ることになる。
いつの間にか、SNSでの発信によって学内や地域の人にtさんは知れ渡っていた。
その結果知名度が急上昇。
これが更に嫉妬を呼ぶことになったのだ。
逆襲(?)のtさん
ある日、tさん企画のボランティアを私以外の参加者が全員当日欠席をした。
勿論表向きは体調不良とかゼミの打ち合わせが欠席の理由だったが、あまりにも露骨だったので私は怒っていた。
ただ、tさんはそんな状況でも気丈にふるまっていた。
幸い、ボランティアは大人数必要なものではなかったため、私とtさんで役割分担をして何とかなった。
結果として非常に好評なボランティアで、本当は受け取るべきではないのだがおやつまでもらってしまった。
tさんと私は帰り道におやつを食べながら若干遠い駅まで歩いていた。
「tさん、こんなつらい目に合うぐらいならもうやめてもいいんだよ……」
「絶対やめませんよ!!私はこのサークルともっとよくしていきたいんです!」
そのまっすぐな心意気に私は自分のことを恥じた。
彼女は自分以上にこのサークルのことを考えていた。
連日、tさんは企画会議でも存在感を発揮し、ついに大きなボランティアの企画を新たに立ち上げた。
今までは過疎地域での力仕事や人手の足りない被災地での活動が主な内容だった。
今度tさんが立ち上げたのはコミュニケーションの勉強会でのボランティア。
今までにない活動だっただけにみんなの注目度が上がった。
これは結構な大人数が参加を希望するはず……。
そう思っていると企画立案者のtさんが参加人数は限られていると発言。
そしてAグループとBグループのリーダー二人を指名した。
これには驚いた。
今まで私が避けていた状況を進んで望むとは。
私はボランティア先との連絡係に注力して現場はtさんに任せることにした。
企画会議後、私はtさんに「いやなことがあったら教えてね、すぐに対処するから!」と伝えた。
tさんは「絶対にそんなことおきませんから!心配してくださってありがとうございます!」
ボランティア当日、私は講義を受けながらも彼女からの連絡が来るのではないかとそわそわしていた。
その日は一日中講義だったため抜け出すわけにもいかず、集中できないまま一日を終えた。
帰宅後、スマホを除くとtさんからのメッセージ。
内容はグループのリーダーとtさんが肩を組んで笑っている写真と「大成功です!!」の一言。
あまりにも意外な結果と衝撃的な写真に驚いてしばらくその場から動けなかった。
すぐに部長へと連絡し「ベルリンの壁が崩壊した!」と報告。
部長も驚いたのかすぐに電話をしてきた。
とりあえず今わかることは少ないから次の会議で報告してもらうことにした。
次の会議、まず雰囲気から違った。
今まではきれいにグループごとに分かれて座っていたのに、リーダー同士で一緒の机に座っていた。
周りは困惑していたが、本人たちはいたって普通に話している。
tさんが来ると二人は手を振って同じ机に座るように誘導した。
あまりにも初体験な状況だったので会議室はざわついていた。
そして報告会が始まった。
結果は大成功、ボランティアとしての活動も十二分に行い、途中でコミュニケーションの勉強会にも参加させてもらえたとのこと。
そこで数多くのことを学んだ三人はたった一回のボランティアでサークルの雰囲気を変えていった。
というか、ほとんど別のサークル。
二つのグループの軋轢は軟化、そのうちだんだんとグループ間の交流も活発になっていた。
たった一回のボランティアでそんな状況にできるとは……。
喜ばしい反面、少し寂しかった。
私が神経を削ってきたことは全く無駄だったんだって。
そのころはすでに秋。
三年生だった私と部長は引退を考えて、残りの期間を後輩たちへの引継ぎに費やすと決めた。
少し寂しい秋だった。
知識の禍いの対抗策は無知の知恵
秋という季節がそうさせるのか。
感傷的になった私は今までの活動を振り返った。
そもそもこのサークルに入ったのも友達に誘われて、副部長になったのも成り行き任せ、その後は誰にでもできる連絡係、グループ間の対立を解消するでもなく、間に入って衝突を避けるばかり。
どうしようもない奴だな……。
ただ、一つだけ自慢できることと言えば。孤立していたtさんに優しくしたこと。
それぐらいだった。
寂しい気持ちはあるものの、私も部長も実習やインターンシップに忙しい時期に入ってそれぞれ活動することに。
インターンシップに参加していた私は、慣れない日々を送りながらも時々サークルのSNSを見て元気をもらったりしていた。
素晴らしい写真の数々で賞賛のコメントを打ちたかったが先輩風をふかしてるみたいでやめた。
そのうちSNSも観るのを辞めてしまった。
そうして生活している間にあっというまに冬。
私も部長も外での活動が終わり、一安心していた。
そろそろサークルに顔を出して、ちょっと豪華な差し入れでも渡そうかという話になった。
実力的にはサークルメンバーに何一つ指針になるようなことができなかった我々ができる最後の奉仕のつもりだった。
高級なお茶菓子とチョコレートを買い、サプライズで渡すために会議をしている小さな教室に入った。
するとグループのリーダーだった子二名とtさんの一名、合計三人だけの会議だった。タイミング間違えたなぁと思ったが、その三人だけでも渡すことに。
おやつを渡すときに三人とも浮かない顔をしていた。
部長と私で「どうしたの?」と聞くと、三人とも俯いた。
さすがにただ事じゃないと思い話を聞くことに。
どうやら、三人ともコミュニケーションの勉強会を活動内容に取り込みたいようで、そのことを告げると非常に不評だったようで、ここ数日の参加率が低い事態になっているようだった。
tさん曰く「ボランティアはコミュニケーションが大事なのに、どうしてそれを学ぼうとしないのかが分からない!」と本気で悩んでいた。
元リーダーの二人も信頼していたtさんが悩んでいることに困惑しているようだ。
私と部長は最後の仕事を見つけた。
部長はそのまま三人の話を聞き、私は学内を駆けまわった。
見つけた他のサークルメンバーに適当な理由をつけて、最近のサークルについて聞いてみた。
すると、やはり内容についていけない人が大多数だった。
「普段の課題や勉強もあるのにその上勉強会に参加しろはキツイ」。
「参加費の補助ももらえるわけじゃないから負担も大きい」。
よく考えればわかることだが、それが分からなくなるのが彼女らの立場。
そのことを私と部長はよく知っていた。
後日、三人に現在のサークルの状況とメンバーが望んでいることをまとめたものを手渡した。
最後に部長が「サークルは楽しく成長できる場所であってほしい、でも誰かの犠牲の上で成り立つのはだめ。できないことを伝え参加できないときは協力し合う、それがサークル部長と副部長の最初の使命だからね」といった。
私はそこまで立派な話はできないので手短に「他人をあきらめないで、常に他の人とコミュニケーションを図ることが大事ですよ」と伝えた。
私と副部長の最後の仕事はこれで終わった。
初めて……
年が明けて正式に引退した。
花束や寄せ書きなど貰ったが正直驚いた。
花束はまぁともかく、寄せ書きで私との思い出を話してくれる人が多かった。
確かに話しかけてはいたが、それもグループの衝突を避けるためにしていたからそこまで印象に残ってないと思ってた。
それでも、相手にとっては思い出になるんだな……。
ちょっとだけ副部長をしていてよかったと思った。
いくら名残惜しくても、これでサークルのメンバーとは関わることが減る。
とりあえずtさんともお別れ。
少し寂しかったが、最初話しかけたときから今までの変化ぶりを考えると楽しみでもあった。
その後、しばらく友達とかと旅行に行ったりり楽しんでいた。
それも落ち着き始めたころtさんから連絡が来た。
内容は食事のお誘い。
確かに、サークル内では結構話してたけど、こういうプライベートで食事をしたりってのはなかった。
なんか権力を濫用しているみたいで。
でも、もう終わったから良いかと思って食事に行くことに決めた。
待ち合わせ場所に向かうと、いつもの動きやすいジャージじゃなくてお洒落なスカート姿で待っていた。
耳にはピアスまでしていて、いつもとは違う感じだった。
とはいってもいつものtさんだった。
「先にお待ちしておりました~!!」と周りに聞こえる大きな声。
数週間ぶりのtさんだったのでなんだか懐かしく感じた。
そのまま近くの個室の中華レストランに入って近況報告をお互いに済ませた。
お酒も飲みいい感じの雰囲気。
そこでどうしても聞いておきたかった事を聞いてみた。
「どうしてこのサークルを続けたの?私だったら絶対すぐやめてるよ!」
「いや…その…」
なんとも歯切れの悪い答えだった。
聞いちゃいけない事だったのかもと思い、慌てていると。
tさんはこちらをまっすぐ見た。
「あっと、タンナさんに話しかけられてうれしかったので……」
思いがけない答えに気が動転していると
tさんは姿勢を正しつつ膝に拳を打ち付けて「はっきり言います!優しくされたので好きになりました!付き合ってください!」
動転している最中、あまりにも衝撃的すぎて髪の毛が逆立つ。
またもや何も言えずに黙ってると「付き合ってくれるまで帰りません!」と宣言。
ようやく自分が告白されていることに気が付いて、すぐに「これからもよろしくお願いします!」と答えた。
これが、サークルで浮いている子にたくさん話しかけた結果だ。
最初は自分のメンツとサークル内の論理をを優先して行った行動。
それが周り周って私のためになっていた。
情けは人の為ならずってことわざがあるけど、本当にその通りなんだなって実感した。
周り周って自分に帰ってくる。
皆さんもたまには自分のために他の人に優しくしてみては?
もしかすると人生を変える出来事になるかもしれない!
小話
なんだかんだで書いていて面白かった。多分動画で見た感じに近いセリフで書いてるからだと思う。実際は全然違うんだろうけど、まぁ楽しかった。
また書いてみようと思う。
ここまで読んでくださりありがとうございます🫏
また興味があれば見てくださいね。読者登録とスターを押してもらえればモチベがすごいことになります🌠
秘密主義者から解放者になって、最終的にステラーカイギュウ。
優しい奴ほど先に死ぬんだな、生き残ってる私が言うのもなんだけど。
(いろいろ話を変えてます)
- 恐怖によって秘密主義者となったタンナ
- 決意と出会い
- 展開する世界
- ステラーカイギュウ絶滅を知るタンナ
- 秘密主義から近代ステラーカイギュウへの変身
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友達と仲間の間~よく眠る保守派のタンナとよく喋る急進派のc~
私が彼女と話した時、悪意はないがどっかに消えてほしいと思った。
(特定回避のため年齢や時期を変えています)
- 紹介された合わないアイツ
- 打算的な行動の結果、時代の流れを直に感じるタンナ
- cと私が歩く知的災いの道
- 二人で一人前だけどくっついてはない関係
教会であったヒトコワ話~真冬に男女二人裸足で歩く~
当時21歳だった私が、真冬に裸足で5キロ歩くことになったのは、教会で暇をつぶしたことが原因だった……
(特定回避のため話の所々を変えています)
⚠閲覧注意⚠
この記事には、性的な描写に死に関する記述に人が怖い描写があります!
そういうものを求めていない人はこの記事を読むのをやめてください!
気分が悪くなってもタンナは責任を取れません!!
- 私とkとj
- へんてこりんな儀式
- 待ち人を待つ私たちが陥った状況
- パニックと冷静さとちょっと光るもの
私とkとj
このお話は今から数年前の話だ。
当時私は地元から離れ、大学近くのボロアパートに住んでいた。
学生生活は順調。
教授とも仲良くなったり、勉強やサークル活動に勤しむ日々。
日々新しい知識を手に入れる喜びを覚え始めた最中、友人の不幸に見舞われた。
突然の交通事故で友人が即死。
大切な友人を亡くした私は変わった。
楽しい生活は一変し、解決のできない悩みに苦しむ生活が続くことに。
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